何かの選択をしようとするとき、自分の持つ価値観や感覚などに自覚的である程、「ふつう」「一般的なもの」「周り」などに対しての違和感を感じることが多くなるのかもしれません。
その違和感は、特にいまの日本における就活などでは、「まともに取り合ってしまったら負け」のように捉えられ、違和感を主張し続けることは 「理想論を語っているだけ」「現実を知らない」などと否定の対象になりがちのように感じます。
そして時に、その違和感をいかにすり抜けるか、いかにその違和感に気付かないようにするか、ということを教えられたりもします。
ですが、そこでわたしたちが感じる 違和感 というのは、見えないもののように上手く扱うことが本当に正しいのでしょうか。
正しさというのは人それぞれで、どこにもないようなものなのかもしれませんが、わたしたちは本当に その違和感に対して、そのようなふるまいをしたいと思っているのでしょうか。
価値観は人それぞれ だからこそ、その違和感が生じるのもあたりまえ だからこそ、本当はただ1つの”一般的なもの”なんて存在せず、それに”馴染む”なんてことはいつまでも、誰も できないのではないでしょうか。
だとすれば あなたがいま感じている違和感は、あなたの価値観をより深く知り、自分らしい生き方を実現するための、カギやきっかけになるものなのかもしれません。
今回は、大学院卒業後の進路を考える中で感じた違和感をきっかけに休学を決めた、山本 響さん が体験談を書いてくれました。
山本 響(やまもと ひびき) さん プロフィール
大学4年間は建築学科。神奈川県出身。
地方でのNPOスタッフの経験を経て地方のまちづくりに興味を持ち、大学院へ進学をする。
大学院の1年間を終え、2年生になる2021年4月から1年間休学。
休学期間中は富山県高岡市に1年間の短期移住をし、空き家の活用を行うプロジェクトに参加。
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▶休学したきっかけ
「自分なりのやり方で就活をしたい」から始まる
きっかけは卒業後の進路について悩みはじめたことでした。
大学院に入学してから二ヶ月。同期の間で「就活」という言葉が出るようになりました。
その中で自分の中で色々な「違和感」が生まれました。
・なんでみんな同じタイミングで始めたり、就活には「手順」みたいなものがあるんだろう?
・一般的ないい会社と、自分にとってのいい会社ってそれぞれな気がする。
・自分はどんなことをやりたんだろう
自分の中に生まれた違和感について、尊敬する人に話をしていたら
「自分の中に生まれた違和感は大事にしていいんじゃない?」という言葉をもらいました。
それをきっかけに、卒業後の進路は自分なりの時間軸と方法で進めようと決めました。
7-11月の間、大学院やもともとやっていたNPOの活動と並行して、自分の気になる人や会社にあったりイベントに参加しながら、自分のやりたいこと、気になる会社を模索していました。ワクワクするような会社や、素敵な人はたくさんいました。
でも、自分がどうしたいのか?はずっと抽象的でもやっとしたまま。なかなか実感がわきませんでした。
もう少し自分のやりたいことの具体度をあげたい。
そのためには、実践をして「これだ!」「なんか違う!」という実感値を得たいなと思いました。
自分が今思う理想の暮らしや働き方に一番近いところでまずやってみたい。
頭で考えたり、自分の中で想像することしかできなかったから、実感値を増やしながら選択していきたいと思いました。
そしたら、このまま学年が上がって修士論文を書いているのは想像つかない。
休学して1年間自由になってみて色々やりたい!と思い休学することを決めました。
自分が今思う理想の暮らしは、地方の町で暮らしながら、まちづくりを仕事にすることだったので、大学院で縁のあった富山県の空き家の事業に関わることを決めました。
▶大変だったこと
「家族に自分の選択を伝えること」
休学の実行自体はあまり大変だなと感じたことはありませんでした。
でも、休学と富山県へ移住をして1年間事業に関わることをどう家族に説明するかに関しては悩みました。
特に、他の同期のように就活をしない私に、母は不安がっていたし、一度きちんとそれについて話をしたら衝突をしたことがあったので。泣きながらケンカした日は今でも覚えています(笑)
だから休学したいということを親に話すのは、かなりハードルが高かった。
しかも話したときは、住む地域(富山県高岡市)とぼんやりと関わる事業くらいしか決まっていなかったので、
ちゃんと生活できるのか?ということをかなり心配され、何回か話し合いの時間を持ちました。
なぜ休学したいかについて(実践して実感値を増やしたいから)と生活に関するお金に関して計画を立てたことで、理解を示してくれました。変わらず心配はされましたが。
今まで、行きたい大学や大学院への進学は、私の意思と家族の望む方向性が重なるものだったので自分の言葉で説明する機会はなかった。
休学、就活のタイミングは初めて自分の意思と家族の考えていた方向が違う選択だった。
家族に自分の意思を怖くても説明する機会があったのは、今考えると良かったのかなと思います。
▶休学しての変化
「自分の言葉で語る」
当初思い描いていたような実感値が増えたかと言われると、正直今はわからないです。
でも、
・移住先で大好きな人たちができて自分の居場所を作れたこと
・「やりたい!」から「できた!」という環境を育めたこと
はあるな〜と思う。
休学&移住して九ヶ月目の今。
年齢が違ったり、所属している組織も、生きてきた背景も違う人たちの中に、自分が心から笑っていられる居場所ができました。
言葉や、暮らし方、進み方から影響をもらえる人にたくさん出会えた。
出会った人からたくさんあったかい気持ちを受け取って、自分もいろんな人に気持ちを贈った。
すぐ何かが変わるわけじゃないけど、きっと自分の何かに生きていくと思う。
移住先で、いろんな人と出会ったり、誰かの企画に参加したり。
そんな中で
「こういうこと街でやってみたい!」が出てきて、
誰かと共有したいワクワクや、伝えたいメッセージがあり、それをイベントやモノとして形にできるんだ〜と思えたことはすごく大きい。
「やりたいことを町で小さく形にできる人を増やしたい」と思っていたけど、自分がまずはそうなれたのかなと思います。
それともう一つ。
書いていて、思い浮かんできましたが、
自分の言葉で語る人、語る言葉に自分はすごく惹かれる。ということに気づけました。
それは、何かすごいことを成し遂げた人だけではなく。
街の魅力の1つに、行きつけのラーメン屋さんのことを語る高校生。
「人生の最後に大事なもんは、やっぱり人との繋がりだ」と語る近所のじいちゃん。
「成長ではなく、満足を」と話す知り合いのパン屋さんをやっている方。
だから、自分も自分の中から出た言葉を語りたいと思いました。
誰かの言っていた言葉を使うのではなく。
▶休学してみて
「しんどかったことも、たくさん」
よかったことだけではなかったです、もちろん。
知らない場所に移住&インターンだったので、寂しさみたいなものも感じる瞬間は多かった。
会議の場で年上の人が多かったので、言葉を飲み込む瞬間は増えたと思う。
去年までは当たり前にいた、対等に同じ熱量でプロジェクトを進める相手がなかなかいなかったり。
それまで物理的に近かった、大学や高校の友達、NPOの仲間とは少し遠くなった。
4日間くらいの引きこもり生活もあったな〜
何もやりたくなくて、人が怖くて、このままで嫌だと思いつつ、部屋から出る気力がない時も。
でも、タイミングになれば
きちんと部屋からは出られるし、自分の中からむくむくと思いは生まれる。
と気づけました。よかった(笑)
▶休学を考えているあなたへ。 休学は全然選択肢にないよというあなたへ。
私にとっては、
自分の休学&短期移住の決断は、ここ2,3年くらいのNPOや大学院での経験を糧にしてできたと思います。
同じようにこの休学という決断と経験は、きっと私の何年後かの自分の決断を支えるものになるんだろうなと思っています。
「模索しながら選んだ休学という決断で、自分の世界と居場所が広がったから、新しい場所でもきっと大丈夫」と。
もし、あなたが休学を決断したら。
その決断とそこで得た経験も、何年後かのあなたを支えるものになると思います。
別にみんなが休学する必要はないなあとも私は思います。
休学も、自分らしい生き方をするための選択肢の1つだと思うので、ほかの選択肢もあると思います。
これを見たあなたが、自分の世界が広がるための選択肢はなんだろうとぜひ考えてみてくれたら嬉しいです!
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